阿佐部伸一 リポート集

東南アジアの人びと

戦時下のサクラ

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緊急事態宣言が出されるなか、今年のサクラが散り始めました。外出を自粛されたり、最前線で忙殺されていたりして、お花見に行けなかった方に、せめて写真でとアップします。拙宅から徒歩で行ける兵庫県西宮市を流れる夙川河畔の桜です。マスクを着けて撮ってきました。

つい先ほどベトナム人の旧友からお見舞いのメールが来ました。子どもの頃ベトナム戦争を経験した彼女が、今の状況を「まるで戦時下」と。30代に内戦取材へ行っていた頃には「死んでも、いっさい文句は言いません」という誓約書に何度かサインしたものでした。前線へジャーナリストが行くと、それを察知した敵は外に情報が伝わらないよう「取材などに来るな、死ぬぞ!」と言わんばかりに、砲撃してきたり、夜間に新たな地雷を埋めたりしました。自分たちが抑えている地域を誇示しようとして、逆に前線を押し戻されそうになったこともありました。

戦禍のなか本当に必要とされているものを最前線で取材し伝えることは、被害を減らせ、停戦=終息への時間を縮められるはずだと、今も信じています。しかし、今回の相手はゲリラやテロリスト集団ではなく未知のウィルス、COVID-19です。ジャーナリストも知らないうちに感染者になっていて、他人を殺してしまう可能性がないとは言い切れません。

小生は定年退職したフリーランスで、取材に縛りをかける会社や協会、記者クラブには所属していません。しかし、取材活動が感染拡大の片棒を担ぐかもしれないという危惧、その一点で躊躇しています。日々もどかしさが増すなか、自分にしかできない局面を注意深く待っています。

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