阿佐部伸一 リポート集

東南アジアの人びと

台湾、香港、イギリス、日本新型コロナ渦2020年4月~

不気味なまでに静まり返る大阪 ~国内感染者1万人超え前日~

新型コロナの人的被害が極めて小さかった東南アジア。その理由をベトナム、カンボジア、タイの3か国で多角的に取材する予定なのですが、しばらく渡航できそうにありません。ということで、国内での取材を続けています。まずは非常事態宣言下の大阪を撮影しました。

「ステイホーム」と言われていますが、ビデオや写真はその時に現場へ行かねば撮れませんので、感染防止対策を取ったうえでの敢行でした。ジャーナリストには休業要請は出ておらず、逆に最も働かねばならない正念場です。

感染拡大防止に努め、移動や外出を控えておられた方々にご覧いただければと思います。

ベテラン教師の現場報告と憂い

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続けて新型コロナ関連で、もう一本アップします。あまりマスコミが取り上げていない局面、子どもたちの教育に焦点を当てようと同年輩の中学校教諭に「現場からの声」を発してもらいました。

5月いっぱいまで休校の延長を決めた自治体がある一方で、オンライン授業を実施できている公立校はわずか5%です(文科省調べ)。

終息は大半の人が免疫を持つ頃と言われ、この闘いの長期化は必至。ならば、次世代を担う子どもたちの教育が危惧されます。

今コロナに纏わる問題を取材・報道しなければ敵前逃亡するような罪悪感に苛まれ、眠れません。ジャーナリストとして、少しでもお役に立てればと思っています。

”コロナ・ストレス”との付き合い方

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緊急事態宣言が延長されました。やむを得ない事情があっても、外出したり営業したりすると白い目で見られるような空気のなか、ストレスは高まる一方です。外出を自粛し、他人との接触を避け続ければ確かに疫病は防げます。しかし、引きこもっていると心の健康は蝕まれがち。鬱積するストレスが背後にありそうなDVや偏見差別の増加をはじめ、「コロナ離婚」や「コロナ鬱」といった造語まで出てきました。

そこで新型コロナウィルス関連のビデオリポート3本目は、心理学者で臨床心理士の旧友、池見陽教授に『ストレス緩和のコツ』を聞きました。もちろんマスク着用、アルコール消毒、2m以上離れて等、感染防止対策を取ったうえでの収録です。

ちなみに、池見教授はバイリンガル。同じテーマで英語版も制作しました。

薄氷に立つ高齢者施設 ~社会介護士の現状報告~

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「新型コロナウィルスによるヨーロッパ諸国の死者の半数近くは高齢者施設で」。4月23日、WHO=世界保健機関はこう発表した。

今回の新型ウィルスは発症しない人もいる一方で、持病がある人、特に高齢者は重症化しやすいと既に周知されている。それを受け、日本ではハイリスクな人たちという観点から、ひとたび介護施設で感染者が出ると大きく報じられてきた。だが、日本の高齢者施設での感染者・死者は、千、万という単位の欧米と比較すると桁違いに少なく、4月末現在で66人というデータがある。

欧米では病床やICUが不足すれば、迷わずトリアージが採用され、高齢者より壮年、青年が優先される。日本では、臓器移植や終末期医療の考え方もしかり、独特の生死観がある。また、高齢者施設では以前からインフルエンザやノロウィルスに対して感染防止対策を毎年実施し、介護員らが対策を習熟していたという実践的な経緯もあろう。

感染者が出た高齢者施設ばかりが報道され、感染者を出さずに持ちこたえている多くの施設の現状はほとんど見えてこない。新型コロナ関連のリポート第4回は『薄氷に立つ高齢者施設』と題し、デイサービスやショートステイ、特別養護老人ホームを運営する総合施設で中核的役割を担っている社会福祉士に最新の状況を聞いた。

開業医の嘆きと奮闘

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ところ狭しと注意喚起の貼り紙が

「ウチみたいな開業医は、感染者が一人でも出たら潰れてしまうからね」。こんな言葉を医師の口から聞いたのは2週間前、持病の治療で3年前から隔週通っている内科医院でのことだった。以来ずっと気になっていたので、5月12日の受診時に「先生、声を上げませんか?」と改めて取材を申し込んだ。カメラやマイクは断られたものの、メモなしには覚えておけないほどの事柄を15分を超えて話してくれた。もちろん医師は小生がジャーナリストであることを承知している。

「みんな(未知のウィルスを)恐がっていてのことで、(人への)偏見や差別ではないと思うけど…」と前置きし、同年配の医師は潰れてしまった実例を話し始めた。「知り合いの内科と小児科でスタッフに感染者が出て、自治体にも拠るけど、そこは保健所の消毒が入った。2週間の休院を余儀なくされ、再開したんだけれど、何年も通ってきていた患者さんをふくめて、誰一人患者さんが来なくなったと」

この医院では(1)玄関前の外で検温し、喉の痛みや咳などの症状がないかを確認、(2)患者をはじめ医師や看護師、事務員全員がマスク着用、(3)待合室には患者を2人まで、(4)窓とドアを開放して換気、(5)ドアノブやソファーを頻繁にアルコール消毒、(6)医師はマスクに加えて防護めがねを着け、原則2メートル離れての問診、としている。

「医師なら、どうすれば感染しないか分かっているし…」と予防策を説明した医師は、玄関ドアに「新型コロナウィルスの検査は、実施していません」と張り紙をしている。この日も午前中だけで37人を診察し、検体採取のためにさらに厳重な予防策を取る時間は捻出できないからだ。

全国の例に漏れず、この医院も患者の大半は高齢者。お年寄りには感染の疑いがあっても検査は勧めず、軽症なら自宅で療養してと言っている。「だって、80歳の人にビジネスホテルで缶詰めになってもらって、不味い飯を食べさせるというのは…」。何年も診ている患者だと、医師の指導を守って出歩かない人かどうかは判ると断言する。この開業医は新型コロナ渦でも全人的医療を実践しているようだ。

「日本での死者が少ないのは、医師のレベルが高いからですよ」。多くの開業医は独自の判断で重症化を防げそうな既存薬を、患者ひとり一人を診て処方していると明かす。「新型ウィルスに対する治験はまだですが」とことわりながら、肺炎やぜん息、脳梗塞などの治療薬を挙げた。「欧米での死者が桁違いに多いのは、一つには良い薬が保険適用されておらず高いし、用途が厳しく限定されているので日本のように柔軟な使い方ができないからでしょう」と推測している。

自分の処方箋を手に立ち寄った薬局では、薬剤師がこんなことを言っていた。「クラリス(肺炎を抑える抗生物質)ですか?普段より出てないですよ。皆さん健康管理に努められているからか、このごろ風邪ひきさんも少ないんです」

フライング営業のスナックで

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マスクの隙間にストローを差し入れてウィスキーを飲む?

「もうあんまり人生に未練ないのよ、私。いつ死んでもいいかなって」。「いやいや、まだ千万馬券あてないと」。幸子(仮名)ママと常連客の昨夜のやりとりだ。

東京都や大阪府などを除く39県で緊急事態宣言の解除が決まった5月14日の午後8時半、まだ解除されていない県で営業を再開していたスナックがあった。新型コロナのウィルス感染でハイリスクな三密の極みとされているのがスナック。カウンターに鈴なりになってマスクを外して酒を飲み、談笑にカラオケとなれば、互いに飛沫感染は避けられまい。まだ営業も外出も自粛要請が解除されていないので、フライング営業である。

50代後半の幸子さんは雇われママ。空家賃と使わないカラオケの配信料を払っていた経営者から「そろそろ店を開けようと思うけど、嫌でなかったら、どう?」と11日に連絡が入ったそうだ。昼間はスーパーのパートに行っているママは、子どもは既に独立して一人暮らし。「私、美味しいものとかお酒、大好きなんだけど、昼だけだと家賃と携帯代で消えちゃって…」。経営者は休業補償してくれず、持続化給付金の申請要件は満たせず、びくびくしながらも店を開けることを選んだ。『自粛警察』という新語をよく目にするようになった。個々の事情などは考慮せず、自粛していない人への攻撃が横行するなか、ママはフライングするか否かの判断を委ねられ、矢面に立たされている。

今の経営者で4代目というこの店は、私鉄の駅前で半世紀以上続いてきた。紛れもなくスナックの草分けと言える。なぜなら、スナックという業態は東京オリンピックが開かれた1964年頃に生まれたから。当時、風俗浄化という観点から酒類提供店の深夜営業への規制が厳しくなった。そこで、酒も出すが「スナック=軽食」の店という口実で規制を逃れるために現れたとのこと。だが、今回は人命が係っているだけに、そんな抜け道もなさそうだ。

それでも特定警戒県以外では入り口に消毒用アルコールを置きながら営業を続けていたバーもあった。「平熱より高い方と3人以上のグループはお断りします。入店前に必ず手指の消毒をお願いします。間隔を空けている椅子の移動は禁止です。互いに1m以内に近寄らないでください。当面、使い捨ての紙おしぼりを使います」。アルコールの瓶の上に貼られていた遵守事項である。

全国でコンビニより多く約10万店あるといわれるスナックは、新型コロナの影響で経営が立ち行かなくなり廃業が続出。加えて、緊急事態宣言の解除後も飲食店は総じて対面で座ることや人と人が近づくことを避けるよう求められるのが自明なので、客足が戻るかも不透明だ。日本の飲み文化が変わるかも知れない。

幸子ママも店を再開するにあたって、毎日検温し、マスクを着け、入り口にアルコールを置いている。知人の居酒屋では看板を蹴破られたと聞き、看板には灯を入れず、カラオケも低音量でマイクなし。競馬の話をしていた常連客は洋食店のシェフ。「今日の客はひとりっ!」と自嘲する。この日こっそり訪れた客は小生を入れて4人、三密には程遠い寂しさだった。

「また来てね」という幸子ママ。フライング営業しているのを知られると嫌がらせがあるかもと、見送りは断った。店の外は真っ暗。オープン当時からの型板ガラス越しにオレンジ色の光が仄かに漏れていた。

崖っぷちの起業家たち

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新型コロナ関連6本目は、休業や廃業を余儀なくされながらも、容赦ないテナント料に苦境に立つ起業家の声に耳を傾けました。一人目は外国人観光客や日本の若者に邦楽を広めようと大阪ミナミに5年前から店を構えている三味線奏者。二人目は高齢社会では健康寿命が大事と奈良の大型総合商業施設に3年前、フィットネスジムを開いた実業家。インバウンドと高齢化、どちらも時流を捉えたビジネスですが、新型コロナの感染拡大防止政策の下、崖っぷちに追いやられています。

ところで、過去2本は久々に書き原稿とスチル写真というスタイルで報じたところ、取材対象が開業医やスナックのママだったからか、映像リポートより多くの反響を頂きました。映像の方が取材や編集に手間暇がかかり、皆さんは受動的にご覧になれるのですが、分からないものです。このリポートはアポ取りに紆余曲折があって、お送りするのが遅くなっていましたが、半分は先月末にビデオカメラで取材済みだったため、迷うことなく映像リポートにしました。お時間が許す方はご覧になって頂ければ、幸いです。

ベトナムからマスク10万枚 日本の労働者へ

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あいりん地区の日雇い労働者へとマスクを寄贈する西田社長(左)

4層の不織布で作られた立体型マスク10万枚が、ベトナムから日本へ届いた。

そのうち段ボール箱10個に入った1万枚は5月21日、大阪市西成区の日雇い労働者の街、あいりん地区へ寄贈された。マスクを贈ったのは建設業の株式会社瑞光。社長の西田長徳さん(43)は「労働者あっての建設現場ですが、マスクを買えない人も多いなか、感染者が出ないように」と動機を話す。

あいりん地区には現在1万6千人ほどの労働者が暮らし、約9割は建築土木に携わっている。生活保護受給者が大阪市で最も多く、路上生活者は千人を超し、高齢化率は60%に達しようとしている(国立社会保障人口問題研究所調べ)。結核患者も府下最多というこの地域に、新型コロナに感染すると重症化する可能性が高いとされる人たちが肩を寄せ合っている。

瑞光はあいりん地区のほか、同社が事業所を置く大阪市や京都市、滋賀県へもマスクを寄贈。合計10万枚という大量のマスクをベトナムから輸入できたのは、以前からベトナム人の技師や技能実習生を受け入れ、ベトナムとの太い繋がりがあったからだった。2007年から7年間技師として大阪で働き、現在は帰国して技能実習生の研修所幹部となっている二ャットさん(39)に、瑞光は3月上旬マスクの調達を相談した。彼が中心となり、品質の良いマスクを短期間に大量に製造し、日本へ輸出できる企業を選定。3月末にはベトナム商務省の品質鑑定証明書が、4月20日にサンプルが到着。28日には10万枚の契約を交わし、今月15日に関西空港へ無事届いたという流れだ。

マスクを個別包装しているビニール袋のラベルには、こう印刷されていた。「AAマスク。ベトナム人の健康を守るために。細菌と煙、埃を濾過して呼吸器を保護します。コロナウィルスの感染予防には、鼻と口の両方を覆うように着けてください。再使用する場合は、石鹸水で押し洗いして下さい。着用中や取り外した後、マスクの外側には触れないでください。製造HN衣料品」。ベトナム語だけで印字されていることからも、ベトナム国内向けの製品だ。しかし、マスクは新型コロナ以前よりは少し値上がりしているものの、市中どこでも簡単に入手できているとのこと。日本人が買い占めて迷惑をかけたということはなさそうだ。

ちなみに、ベトナムは2月初めから中国との旅客便を停止したり、感染者が出た村を閉鎖するなど早めに感染防止対策を徹底させてきた。その結果か、新型コロナによる死者はゼロとされている。ニャットさんは「どこの国の誰もが新型ウィルスで苦しんでいます。困難な時に助け合うのは当然です。日本も頑張ってください」とメッセージを送ってきた。

あいりん地区でマスクを受け取ったのは、西成労働福祉センター代表理事の内屋幸治さん(67)。同センターでは以前からインフルエンザなどの予防のために、日雇い労働者たちにマスクを毎日100枚配っていた。だが、新型コロナの流行が報じられるようになると、1日に400枚でも足りなくなり、大阪府に緊急事態宣言が発令された先月7日を待たずして、マスクの在庫は尽きていたという。

マスクが寄贈された日は、奇しくも関西の2府1県の緊急事態宣言が解除されたその日だった。内屋さんは「解除になって、これから仕事も増え、またマスクが大量に必要になるところでした」と礼を言い、瑞光へ感謝状を手渡した。

緊急事態宣言を受けてゼネコンらが公共工事などをストップしたこともあり、同センターによると4月の求人数は前年同月比でマイナス30・4%だった。工事現場は大型連休明けに順次再開されているが、内屋さんは「マスクを持っていないからと、仕事にありつけなかった人も実際にいたので、本当に助かります」と感謝の弁を繰り返した。自前でマスクを用意することを雇用条件にしている業者があるのだ。

ガーゼ製で1枚200円程度といわれるアベノマスクにいたっては未だに受け取っていない世帯も多く、あいりん地区などに暮らし、自分の郵便受けを持たない人たちには未来永劫届かない。一方、ベトナム人たちが1枚あたり27円ほどで届けてくれた高品質マスクは、それを本当に必要としている人たちの手に渡っている。

フェースガードにマスクの舞妓 ~コロナ感染者再急増 観光奈良は~

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日本での新型コロナ渦は緩やかながら、このまま収束に向かうだろうから、次の取材先はライフワークの東南アジアに戻そうと思っていた矢先のことでした。国内の感染者が7月16日、3か月ぶりに600人を超えたのです。政府は感染者の再急増をうけ、7月の4連休から実施する観光業者支援事業『GO TOトラベル』で東京発着を除外と決定。

タイやベトナムなどの入国条件が未だ厳しいこともあり、大打撃を受けている観光業者を取材すべく、急きょ日本を代表する観光地・奈良へ行ってきました。興福寺の中金堂が再建され、大修理が行われていた薬師寺東塔の覆いも取れたのですが、外国人観光客らでごった返した社寺仏閣や商店街は閑古鳥が鳴いています。

夜と早朝の古都の魅力を満喫し、より多くのカネを落とす泊りがけの観光客を増やそうと、新しいホテルや夜の見どころを増やしてきた奈良。『GO TOトラベル』などを機に、観光客が戻り始めることを多くの人が期待していました。しかし、ここにきて客と自分の健康管理よりも、感染防止や景気浮揚の対策を発動する政府に翻弄される観光に携わる人たち。

今回のビデオリポートでは、緊急事態宣言下の自粛から営業を再開したばかりのお茶屋とホテル、それに、かき氷店を訪ね、それぞれの本音に耳を傾けています。本業だけでなく、数々の町おこしイベントを企画・運営し、奈良経済の振興に尽力してきた人たちだけに、コロナ渦の真っ只中でも前向きな展望を語ります。フェースガードにマスク姿で舞を披露する舞妓さんですが、白塗りの下は現代の娘さん。「オンラインお座敷」といった提言もありました。

(文・写真/阿佐部伸一)

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