タイタイ開国 コロナとの共存へ2021年10月
東南アジアから久々のリポート
一方、あたかもコロナで身動きが取れないことを見透かしたように、タイでは民主化デモの弾圧、ミャンマーでは軍事クーデターなどが発生した。また、コロナそのもので医療危機に陥り、遺体の処理も儘ならない国々もあり、一日も早く駆けつけたいという焦燥感だけが募っていた。そうしたなか今回、1年8カ月ぶりで東南アジア取材を敢行した。渡航するためには、事前にビザと入国許可証、PCR検査の陰性証明を求められ、手続きは簡単ではなかった。まず、ビザ(ノンイミグラント・シングル)の取得にはタイ企業からの招聘状とその企業の登記簿をはじめ、入国予定者の銀行残高証明や退職・在職証明書、日本側の保証人などを求められた。ビザ取得後、次に入国許可証をオンライン申請したが、往復航空券に加えて、政府指定のホテルとコロナ保険、入国後のPCR検査の領収書などを揃えなければならなかった。また、飛行機に搭乗するには、出発72時間以内のPCR検査陰性証明書も必要だった。普段ならば、現地に着いてから申請するアライバル・ビザで気軽に行け、LCCの直行便もあったが、コロナの世界的まん延で、まるで東西冷戦時代のように海外との往き来が困難になった。
インターネットが発達し、世界各地から写真や映像、記事が毎日のようにアップロードされている。便利な反面、ハンドルネームで発表されていたり、署名がなかったりする記事やビデオもあり、さらには伝聞や転載が多くて、「フェークニュース」と一蹴されても、強く反論できないことさえある。カメラだけではなく、暗室道具一式に電送機まで携行しなければ、現地から写真1枚送れなかった30年前とは隔世の感がある。だが、小生はこうした便利なインターネット時代だからこそ、愚直に「自分が見た、聞いた」という一次情報に、万難を排してでも拘り続けたく思っている。
関西空港を発った翌朝、シンガポール発プーケット行きの飛行機は、欧米人を中心にほぼ満席だった。小生と同じ考えで、入国直後のPCR検査が陰性ならば、ホテルに缶詰めにならず、プーケット島内を自由に動けるという『サンドボックス制度』を選んだ人たちだ。10月1日には島内隔離の期間も2週間から1週間に緩和され、2回目のRCR検査が陰性ならばタイ全土どこへでも移動できる。小生が入国した19日、タイの新規感染者は9千122人、死者は71人。タイの人口は日本の半分ほどなので、感覚的にはこの2倍となる。
さて、まずはその1本目、タイ最大のリゾート地、プーケットから『タイ開国 コロナとの共存へ』をお送りする。奇しくも取材期間中の10月21日、タイ政府が「46カ国からの隔離なし入国を11月1日から認める」と発表。46カ国には日本も含まれ、11月を境に入国が格段に容易になる見通しだ。